四季アーバニスト第弐番

野村喜和夫


柔らかな戦争がしてみたい
夏の午前2時になると
この街の縁辺がまず反りはじめ柔らかな
戦争がしてみたい蛇行する河のかたちになって
漆黒をのぼりつめ
ぼくの額のすぐそばに滞留するから
するとようやく風がかよい
きらきらした中間地帯が柔らかな戦争が
幾ばくかの星をたずさえてあらわれる
おお柔らかな柔らかな
待機の姿勢からも夢は漏れ出るのだそこへ
赴こうとするぼくのもっとも感じやすい中枢は
この街の縁辺と紙一重に舞って
アーバニスト
秘匿しておきたかった足さきの
柔らかな戦争がしてみたい疼きまでもが
思わずなぞられてしまう

(詩集『幸福な物質』より)